私にはどんな不況がきても安定して不労所得を得られる大きな資産はありません。したがって、バリスタFIRE(セミリタイア)をすることになった場合、資産を枯渇させないためにどのようにして資産の取り崩しをするかは大変重要なことだと考えています。取り崩し方法を検討するのに参考になる情報を探していますが、FIRE達成に向けた情報に比べて、取り崩し方法の情報は少ないという印象です。
三菱UFJ信託銀行の投資理論等資産運用に関連するレポート
資産運用の平均利回りはあくまでも平均である(利回りのばらつきがある)から、定額で取り崩すと枯渇する可能性が高くなります。そのため取り崩し戦略を考える必要になるわけですが、2021年12月に公開されていた三菱UFJ信託銀行の投資理論等資産運用に関連するレポート『2021年12月 No.115 取り崩し期の資産運用を考える』が勉強になりました。
資産運用戦略と取り崩し戦略
このレポートでは、退職後の資産取り崩し期の資産運用が重要であるとし、老後の資産運用において「資産寿命を確保すること」と「生活資金を確保すること」の両立をはかる具体策を考えています。具体策は、以下のような想定のもとで資産運用戦略と取り崩し戦略が検討されています。
- 個人のプロフィールの想定
- 市場環境の想定
- 資産運用戦略
- 安全資産での運用(利回り0.05%)
- リスクをとる運用(株式比率を25%、50%、75%)
- 取り崩し(支出)戦略
- 資産の取り崩し額を一定にする(支出額一定)
- 取り崩し額を抑制するルールを設ける場合(支出額変動)
- シミュレーション方法
- 各運用戦略、支出戦略の組み合わせについで、モンテカルロシミュレーションを行い分析(35年分の収益率シナリオを10,000通り生成)
このレポートのシミュレーションでは、資産運用戦略(運用リスクの違い)によって予定取り崩し額が異なります。その額は2,000万円を元手に35年間の資産寿命を確保することを前提に決められています。
支出額一定は資産が枯渇する場合がある
このレポートでは、リスクをとる運用はどれも2回に1度は資産寿命が持たない結果になっていました。けっこう恐い結果です。資産形成時の定額積立と同じ考えで資産の取り崩しを始めると取り返しのつかないことになりそうです。一方で、運用リスクを取った方が総支出額は安全資産の運用よりも9割近い確率で多くなる結果を示していました。運用リスクを取らない人が「年金だけではやっていけない」と言いがちなのは、そういうことなのかなと思ってしまいます。
支出額を調整すると資産寿命は確保される
このレポートの支出調整ルールは次のようなものでした。
当年度支出額=(実績資産額/予定資産額)✕当初支出額
実績が悪ければ支出額が減り、良ければ増えるというものでしょう。このルールの場合、運用が悪い場合でも安全資産の運用より総支出額が多くなるという結果をこのレポートは示していました。
当初の資産を2つに分けて運用するのが最適か
このレポートでは、資産の半分を安全資産運用、もう半分を上述の支出額を調整するルールでの運用としてシミュレーションをしています。この方法は他の方法と比べて、最悪の運用状況で最も支出額の確保がされやすいという結果が示されていました。
この資産を分ける方法を読んだとき、『つみたて投資の終わり方』を思い出しました。
このレポートに載っている取り崩しルールと、この本に載っている資産の取り崩し手法とは同じものではありませんが、『つみたて投資の終わり方』の手法を参考にするのは間違っていないなと思いました。ただし、自分がやろうとしていることは35年よりも長い取り崩し期間になりますので、自分のためのプランをよく考えて実行に移すことができたらいいなと思います。
ということで、興味がある方は三菱UFJ信託銀行のレポートを見てみてください。